甲子園浜でバードウォッチング
甲子園浜でシギやチドリの観察
久下氏が甲子園浜で、シギやチドリをはじめとする、海辺の野鳥を観察するということなので、お誘いくださいました。今の時期は、旅鳥が春の渡りの最中なので、この時期か秋にしか見ることができない野鳥が見れるかもということでした。初めての海辺のバードウォッチングには、最高の機会だと思い、同行させていただきました。
岩礁の野鳥を見る
先ずは、岩礁の上に止まる野鳥を観察です。都市公園の木々をチェックするよりも、はるかにターゲットとなる場所が少ないので、順に見ていくこともできますが、飛んでいる鳥の行く先を目で追い、岩礁に下りる所を双眼鏡で観察するのが最も簡単な方法です。この方法で野鳥を双眼鏡で捉えて、ある事に気付きました。岩礁に下りた野鳥が、とても小さく見えるのです。最初に岩礁をチェックして、何もいないと思ったのですが、そうではないのです。小さくて気付かなかったのです。
詳しく説明すると、15~20mぐらい先にコアジサシが飛んでいます。翼を広げると50cm以上のサイズです。障害物が無く、しっかりと見取れるので実寸法よりも少し大きく感じます。岩礁までの距離はおそらく50m以上あると思われます。その岩礁に降り立って、翼を畳むと、コアジサシの全長(くちばしの先から尾羽の先)は、25cmほどのムクドリぐらいのサイズです。
50m先のムクドリを想像してみてください。かなり小さく見えます。鳥であることは分かっても、種別を見分けることは困難です。
鳥が下りた岩礁を注意深く見ると、野鳥がいることを認識できます。しかし、鳥が下りたかどうかのアテがなく、単に岩礁を双眼鏡でチェックするのであれば、かなり注意深く見ないと見つけにくいのです。
カルガモ
カモらしき鳥が泳いでいます。双眼鏡で見ると「カルガモかな?」という感じで、海にいるので違和感を感じます。フィールドスコープで見ると、間違いなくカルガモでした。他にカワウ、コサギ、ダイサギなど池や川でよく見かける水辺の野鳥も、海辺で見ると違う種別の野鳥に見えるのは私だけでしょうか?
チュウシャクシギ
中型の鳥が岩礁の上に降り立ちました。くちばしが特徴的なチュウシャクシギです。図鑑では全長42cmとあるので、キジバトとハシブトカラスの間の大きさです。岩の隙間や砂浜の穴に長く湾曲したくちばしを突っ込んでエサとなるカニや虫などを採食すると久下氏が教えてくれました。
海辺でバードウォッチングをしていると実感が湧く、フォルムに興奮しました。
干潟の方へ移動する時に、堤防の外にあるテトラポットの上で片足立ちするチュウシャクシギを観察することができました。あまり近づくと飛んでしまうので、あえて距離をおいて観察しました。片足で立っているのはリラックスしている状態だそうです。あれぼど長いくちばしだと飛ぶのに邪魔にならないのかと思います。南半球からシベリアの方まで、地球を半周近くも飛ぶのだから驚きです。
干潟でバードウォッチング
干潮の時間帯なので、干潟が出ていて野鳥がやってきます。それを観察します。先ほどの岩礁よりは距離が近く、双眼鏡でも、種別の見分けができます。
余談ですが、日本最大の干潟で有名な有明海で野鳥を観察する場合は、干潮の時間帯は避けるそうです。干潟があまりにも大きくて、野鳥たちは、はるか地平線の向こうにいるからです。ある程度、満潮に近くなると、干潟が小さくなって、観察できる距離にしか、野鳥がいられなくなり、その時間帯が有明海でのバードウォッチングの最適な時間帯だそうです。
コチドリとシロチドリ
コチドリがいました。京都の鴨川ではイカルチドリという野鳥が見ることができることで有名です。イカルチドリは留鳥ですが、コチドリは夏鳥です。また、大きさもイカルチドリは全長21cmですが、コチドリは16cmとかなり小さいです。最大の特徴はアイリング(目の周り)が黄色いのです。
この日、シロチドリという野鳥も見ることができました。頭頂部がコチドリよりも明るい茶色で、おでこの部分は白色です。首の回りの黒い柄も、正面では途切れています。大きさや歩き方は似ていますが、よく見れば直ぐに分かります。
コアジサシ
アジサシという、地球を南北に半周する旅鳥がいますが、アジサシよりもかなり小型です。コアジサシは日本で繁殖して、オーストラリアの沿岸部で越冬する夏鳥です。(分布は東西にも広いので、ヨーロッパ⇔アフリカなどの渡りもある)
このコアジサシは頭頂部まで黒い夏羽です。
くつろぐチュウシャクシギ
長いくちばしを羽に差し込んで片足立ちしているチュウシャクシギがいました。目が開いているので眠ってはいませんが、かなりリラックスしています。
冬にカモ類がくちばしを羽に入れているのは、くちばしが冷えて体温が下がるのを防ぐためと読んだことがありますが、チュウシャクシギは何が目的なのでしょう?
キョウジョシギ
キョウジョシギは漢字で書くと京女鷸。夏羽の黒、白、栗色の模様が、京都の女性が着る着物のような派手な色彩であることから、この名前が付けられたそうです。くちばしで石をひっくり返してエサを探すので、英名では「Ruddy Turnstone」(直訳:赤みがかった石回し)という名前が付いていると久下氏が説明してくれました。
全長22cmなので、ムクドリよりも少し小さいサイズの旅鳥です。
トウネン
干潟に小さな野鳥がいました。トウネンという野鳥だそうです。干潟は距離感が分かり辛く、比較対象物がほとんどないので、大きさが掴みづらいですが、スズメと同じぐらいの大きさです。スズメサイズですが、ゴカイや小型の甲殻類を捕食するそうです。
キアシシギ
キアシシギは、その名の通り、脚が黄色いシギです。水の中を歩いていて、なかなか黄色い脚を撮影できませんでしたが、粘りに粘って、久下氏が撮影してくれました。ムクドリサイズです。
ハマシギ
トウネンの奥に写っているのがハマシギです。お腹が黒いのが特徴です。トウネンもハマシギも、日本では春と秋にしか見れない旅鳥です。
コアジサシの繁殖行動
そろそろ撤収しようかと移動している時に、求愛中とわかる行動をしているコアジサシを発見したので、観察することにしました。背を低くしているのがメスで、胸を張っているのがオスです。
観察していると、久下氏が「あっ!」と声を出しました。何事かと思うと「足環が付いている」と言うのです。確かに、オスの右足に標識用の足環が付いています。このリングは、野鳥の移動や寿命について正確な知識を得るためのリングなのです。(詳しくは鳥類標識調査員についてをご覧ください)
久下氏は野鳥ガイドだけでなく、鳥類標識調査員の資格を有し、鳥類標識調査を行っています。
足環の番号まで読み取れないので、正確なことは不明ですが、関西空港の近くでコアジサシの足環を付けている調査員がいるので、このコアジサシは関西空港の辺りにいた可能性があるそうです。
コアジサシは、無事に交尾行動を終えました。コアジサシは日本で繁殖し、ヒナを育てて秋には南へ渡っていきます。コアジサシの個体数は減っているということですが、一羽でも多くのヒナが育つことを願うばかりです。
※ 各野鳥のサイズは「野鳥観察ハンディ図鑑 新・水辺の鳥」(日本野鳥の会)を参考にしております。
バードウォッチングに関する気付き
- 海辺は野鳥を見つけやすい
- 森林の小さな野鳥のようにすぐに飛び去らないので、観察しやすい
出会えた野鳥の一覧
[table “birdwatching20210509-list” not found /]夏鳥 冬鳥 旅鳥 留鳥 に関する詳細は、バードウォッチング基礎知識 鳥の渡りのページをご覧ください。
『日本鳥類目録 改訂第7版』(日本鳥学会2012)準拠
バードウォッチング ツアー
初めての方でも楽しめる、野鳥ガイド 久下直哉氏 と行くバードウォッチングのツアーです。
バードウォッチング基礎知識
久下直哉氏監修のバードウォッチング基礎知識です。バードウォッチングを始める方は参考にしてください。 バードウォッチングの楽しみ方 / バードウォッチングの時の服装や持ち物
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甲子園浜の場所と行き方
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